SweetSundaydate
「花曇りの日曜日」



日曜の朝、運命の(?)デートの日である。
舞は待ち合わせ1時間以上前なのに、
校門前で立って待っている。
既に緊張しているのか、固まっている。
格好は、髪はいつものポニーテールだが、
服は原のアドバイス通り私服を着用している。
しかし、『おしゃれに』と抽象的に言われても解らず、
白のシャツにインディゴブルーのジーンズという、
シンプルすぎる装いである。
だが、舞はこの服装に落ち着くまでに
軽く5時間は懸かったため、朝風呂に入る羽目になり
入ってすぐ家を出てきたのである。

空は雨は降りそうにないが、晴れとはいえない花曇り。
舞は相変わらずそわそわしている。
しかも、口はごにょごにょ動いている。
恐らく原のアドバイスを繰り返してるのだろう。
その唇には別れ際に『原講師』からプレゼントされた
透明のリップグロスが、うっすらと引かれている。
(因みに、ひきかたも原に習ったそうな。)

暫くして、速水がいつもより三割増し位
幸せそうな笑顔でやってきた。
速水は一瞬「あれ?」という顔をして
舞のもとへ走り寄る。
「ごめん、待った?」
いつもの笑顔。
舞は頬を染めて、「いや」と顔を横に振る。
「は、早く着きすぎただけだ。」
「そっか、よかったぁ。」
遅刻しちゃったかと思ったよ。と、速水は笑う。
「何処へ行くのだ?」
と、舞は問いかける。
「良かったら、映画館に行かない?」
チケットあるんだ。と鞄から出して見せる。
舞は首を縦に振る。
その答えに速水はにっこり笑うと、
気付いたことを口にする。
「ね、もしかしてお化粧してる?」
いつもより艶やかな唇がとても色っぽく感じる。
舞は、目に見えて解るほどあたふたと動揺したが
答えを口に出して返さず、
「でっ、でででは行くか。」
とぎこちなく言うと歩き出した。

「しかし、何故このような映画をわざわざみたがるのだ?」
舞は理解不能という顔で速水に問う。
「うーん・・・。折角チケットあるから・・・。」
曖昧な答えを返す速水。
普通の人にはバレバレな目的も、舞は解っていない。
戦争ものなのだ。
いわゆる戦意高揚を目的としたヤツだ。
内容のためか、チケットの入手状況のためか
館内はガラガラである。
いや、もしかすると誰もいないかも・・・。
若い二人は始まった映画を座ってみている。
・・・・・・ように見える。他の人から見たら。
しかし、本人たちはそわそわと、落ち着きがない。
ちら、と速水は舞を見る。
隣の席で姿勢もよく、ちょこんと座って
スクリーンを見ている。
だがしかし、その顔は真っ赤でかなり緊張し
ガチガチに固まっているのが解る。
(うわ・・・。凄い緊張してる・・・。)
どうしようか、速水は悩む。
(こんな状態じゃ、手なんて触れないか・・・。)
人目がなければ応じてくれるかと思ったものの、
どうやら、かえって逆効果だったらしく
速水は少し悲しくなる。
しょんぼりしかけた速水の視線に気付いてか、
不意に舞が彼の方をみた。
目が合う。
舞は驚いて、びくりと震える。
しかし、目を逸らせずにいる。
(これって、チャンス・・・かな?)
速水はそう思う。
今なら・・・今だったら手に触れても大丈夫そうな・・・
そんな気がして、速水が手を動かそうとした時、
信じられないことが起こってしまう。

  
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