SweetSundaydate
「KISSの温度」



映画館に入ってから舞はずっと、原から教わった
心得を心の中で繰り返していた。
心得、とは服装云々ではなく、『仲良しになれる方法』というアレの方。
原曰く、映画館が最適で、もし『目が合ったら』チャンスなのだと言う。
因みに今の舞の状態がまさしくソレである。

(ま、まさか本当に目が合うとは・・・)
びくりとしたのは、このせいだ。
(め、目が合ったら)
やたらと混乱した思考を立て直す。
目は合ってしまっている。それはもう、ばっちりと。
確か、次の言葉は・・・
『彼の方に顔を向けて』
速水の方に顔を向ける。
『軽く目を閉じて』
きゅ、と目を閉じる。
『少し、彼に顔を近付けるの。』
少し速水の方に顔を寄せる。
(ほ、本当にこれで仲良くなれるのか、原よ?)
舞は訳も解らず言われたことを忠実にしているが、
効果はてきめんである。

(えっ、えええええっ!?)
今度は速水の方が混乱した。予想など出来るだろうか?
手をつなぐこともままならない彼女が、2人きりに等しい映画館でこちらに顔を向け、目を閉じてみせたのだ。
(こ、これってもしかして・・・。)
ごくり、と思わず唾をのむ。
(・・・いいのかな・・・?)
原の企みは大成功である。
まぁ、女のコの方からこれだけエサをばらまかれて、何もしない男もいないだろうが・・・。
と、いうわけで速水も少し顔を近付ける。
(うわ、可愛い・・・。)
こんなに近くで彼女を見たのははじめてだった。頬を染め目を閉じて待っている(ように見える。)舞は普段の彼女より軽く5倍は可愛い。
うっすらとグロスがひかれた艶やかな唇に、誘われてる気がしてならない。
軽く目を閉じて、更に顔を寄せる。

(・・・そういえばどれ位目を閉じてるか、聞いてなかったな。)
ふと気付いて舞は目を開ける。
(なっななななな・・・っ)
反射的にまた目を閉じてしまう。
なにせ、どアップの恋人の顔だったのた。
かぁあああっ、と顔が熱くなる。
(こっ、ここここここ、これはもしかして・・・)
そこで舞の思考は停止した。
唇にやわらかな温もりと感触。
大きく打つ鼓動。
舞から香る石鹸の甘い香りに、速水はくらくらする。
女の子はいい匂いがする、というのは本当らしいことを実感していた。
ほんの数秒の、軽いキス。
唇をはなして速水は舞を見た。両手でジーンズの膝のあたりをぎゅっと握り締め、真っ赤になってうつむいている。
(はっ、原め!!『仲良く』とは・・・これのことだったのかっ!!)
しまったやられた、ハメられた!!
そう思うものの、鳴り止む所か加速し続ける心臓のばくばくという音にくらくらする。
(こ・・・この先は、どうすれば・・・っ)
それを楽しむ為に、原はあえてそのあとについては語っていない。
そして、このあと速水は魂が抜けかけているような舞を、この日の目標であった『てつなぎ』で送っていくことになった。
真っ赤な顔で、まともな反応を返せない舞の横でこの上なく幸せそうな顔をして。

余談ではあるが、翌日二人は善行と若宮にからかわれ、速水は激しく動揺し、舞は恥ずかしさの余り怒って物を投げつけることとなる。

SweetSundaydate・おしまい


あとがき
実は、一番に浮かんだお話です。
ありがちかなー。という意識があってちょっと躊躇したんすけど。
メインタイトル・・・・シスプリ好きな方にはバレバレですね。サブタイトルは全て歌のタイトルです(笑)

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