サヨナラダンス
恋のいいわけ



一緒にお昼食べて
一緒に仕事して
時々、一緒に帰って
それだけで幸せだった
だけど、もう、それも叶わなくなる
一番の夢は叶わなかった
だからせめて、ちいさな夢をみる


「浮かない顔してるねぇ、バンビちゃん。」
がばっという擬音を書き込みたくなる様な勢いで大きな陰が速水に抱きついてきた。速水は身体をよじり何とか振り払うと何時もと同じくため息をついて、何時もと同じく返す。
「もう、いい加減それやめてよ。瀬戸口君。」
瀬戸口は速水の毎度の抗議に「悪い悪い。」と、全くもって悪びれない表情で笑って言うと、後ろから駆けてくる滝川を親指で指し
「これから滝川の付き添いで明日の服を見に行くんだが、お前さんもどうかと思ってさ。」
と、誘ってきた。
「来いよ速水、一緒に行こーぜ。」
人懐っこい笑顔で見を乗り出し誘ってくる滝川と、「愛の伝導師直々のコーディネートだぞ?」と、悪戯っぽく笑う瀬戸口を交互に見て
「うん。僕もまだ服とか用意してないし。」
と、誘いにのった。


「師匠ー、コレどう?」
「却下。」
人類優勢のため、一時期より賑わいを見せる新市街の紳士服売り場で、上のやりとりが既に10回は繰り返されている。
「大体頭のソレ、なんとかならんか?」
瀬戸口が滝川のトレードマークとも言えるバンダナとゴーグルを指し示す。確かにコレがあっては、フォーマルも何もあったもんではない。
「ええー、嫌だよ、コレ外すのー。」
心底困ったようにゴネる滝川に「彼女ゲットできねーぞ。」と、ツッコミを入れ、しょーがねえなぁと頭をかいて
「バンダナだけは勘弁してやる。
・・・あと、これとこれと・・・」
棚の中の決して種類の多くない服を選んで引っ張り出すと、滝川に押し付ける。
「これで決めてこい。これでダメなら、もう知らんぞ。」
と、試着を促す。
ふう、やれやれ。と息をつく瀬戸口の横から
「瀬戸口君。」
と、ずっと黙って「滝川スキーファッションショー」を見ていた速水が口を開いた。
呼びかけに「ん?何だ」と問いかけると、
「格好よく見える服選んで。」
いやに真剣な表情で速水は瀬戸口にリクエストした。瀬戸口は、目をぱちくりさせると心底楽しげに笑って
「気持ちは解らんでもないが、背伸びすることはないさ。要は、バンビちゃんらしく、な。」
そう諭して、棚から服を選び出し、ぽんと速水の手に乗せた。
すねたような顔している速水を試着室へ押しやり
「イイオトコになってきなさい。」
と、まるで原の様なことを言った。



BGM:AyanoTsuji 「恋人どうし」「クローバー」


  
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