真昼の星
舞は少し黙ってから口を開いた。
「星を見ていた。」
「星?昼間なのに?」
速水は聞き返す。
真昼に見える星といえば・・・。
「うむ、星だ。
夜に見える星は昼になったからといって
無くなりはしないであろう?
見えずとも必ず存在するのだ。
・・・まぁ、今見ることのできる星もあるが
太陽を見る訳にはいくまい?」
速水の考えを見透かした様に舞は答える
「見えない真昼の星を見てたの?」
「そういうことになるな。」
結局は眠ってしまったがな、と舞は付け加える。
速水は自然と笑みを浮かべる。
そんな彼を不思議そうな顔で見て、舞は問いかける
「そなたは何をしておるのだ?」
あぁ、そういえば。と、当初の目的を思い出す
「僕はうんてい運動しに・・・」
ふむ、そうか。と言うと舞は、すっと立ち上がる。
「どうしたの?」
舞は座ったままの速水を見下ろし簡潔に答える
「腹が減った。味のれんに行く。」
女の子らしからぬ、彼女独特の言い様と
先刻の寝顔とのギャップに少し笑うと速水も立ち上がり、
(そういえば・・・)
と、鞄の中を探り中から小さな包みを取り出す
「ね、よかったらこれ食べない?」
歩きかけた舞は足を止め、振り返る
「何だ?」
「さっき、星の話してて思い出したんだ。」
速水は包みを開きながら、えへへ、と笑う。
「昨日、中村に少し砂糖を分けてもらったから
作ってみたんだ。」
速水の手の中にはレースペーパーに包まれた
星の形のキャンディと小さな色とりどりの砂糖粒。
こんぺいとう と呼ばれる砂糖菓子。
「よいのか?砂糖菓子など高価だろうに。」
躊躇する舞に、速水はにっこり笑って
「どうぞ」
と手を差し出す。
包みの中の小さな星たち。
舞は手をのばし、星を手にとる。
5つ、6つ手にとって手のひらに包み込む
舞の姿に速水は嬉しそうに微笑むと
残りを包み直し、鞄に入れるとペーパーを一枚取り出し
「そのままだと、べたべたするよね?」
と言うと舞を見て微笑んだ。
包んであげる。と、言う速水の言葉に舞は手を開く。
伸ばされた速水の指先が舞の手に触れて
2人は反射的に手をひく。
舞の手からこぼれ落ちる小さな星。
淡く頬を染め、驚いたような、せつないような・・・
表情を変えた舞に速水は見入っていた。
はっ、と舞が動く
「すっ・・・すまぬ。」
慌てて落ちた星に手をのばす舞に速水も我に返り
「わ・・・芝村やめなよ。
まだ残ってるから、わざわざ拾わなくても・・・。」
「しかし・・・」
高価な調味料である砂糖で作られた菓子。
舞は小さな子供のような表情で速水を見た。
速水は再び包みを出すと、舞の選んだ色と数を取ると
手早く包むとリボンを結び両手に乗せて差し出す。
「はい、どうぞ。」
舞は、ゆっくり手をのばし包みをとると両手に包み込む。
「感謝を・・・。大事に食べる。」
小さくそういうと速水をみた。
「どういたしまして。」
と優しく笑う速水に舞は顔を赤くすると
でっ・・・ではな、とだけ言うと走り去った。
ーまるで急速に速まった鼓動を
走ることによって正当化させるかのように−

速水は走り去る舞を見ていた。
胸が熱い。
今更ながら実感する
(僕・・・あのこが好きなんだ・・・)
少しの間に知らなかった彼女を沢山知った。
それだけで嬉しくて、苦しくて、胸が熱くて・・・。

少しずつ想いが走りはじめた。
うららかな午後。


あとがき
ふと思ったけど、こんぺいとうって
手作りできるモノであろぉか?(笑)
舞の「真昼の星」を見る、というのは
『運命のタロット』の片桐先輩の行動ですね。
かなり好きなシーンで。(笑)

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