きみのうた
「君への気持ち(告白・後半)」



「聴いてくれた?」
速水は舞の前に立ち問いかける。
舞は、こくんと首を縦に振る。
聴いたと言っても、途切れ途切れだったが一応大体は聴くことができた。
「僕からのね、プレゼント。」
そう言って、にっこり笑う速水を舞は未だぬいぐるみを抱いたまま、紅い顔をして見た。
「前に、舞が僕の声褒めてくれたでしょ?
だから・・・恥ずかしいかな?とも思ったんだけど、僕が僕だけが舞にあげられるものって、きっと君への気持ちしかないから。」
覚えたての楽器、まだたどたどしい歌声。
だけど心は、気持ちだけは、心の底から詰め込んだつもり。そんな彼の思いは声となり、歌となり舞の心に染み渡った。
ー充分すぎる、気持ちー
胸の奥が詰まり、舞は動くこともできず、ただ速水を見ている。
紅の比率が高かった空も、蒼の比率が高くなり夜を告げ始める。
速水は、また一歩舞に近づき楽器を近くのビールケースに置くと、彼女の小さな手を両手で包むように握った。
「もう少し、聞いてくれる?君への気持ち」
それは、『いらなかったら突き返していいから』とでも言いそうな少し気の弱い問いかけだった。そんな彼の言葉に舞はまた一つ頷く。
「ずっと前に伝えるべきことなんだけど・・・ね。」
速水のその言葉に、舞はやっと声を発する。
「ずっと、前?」
その問に『うん。』とだけ答えると少し微笑み、
大きく息を吸い、空を仰ぎ
息を吐き、舞の瞳を真っ直ぐ見つめて口を開く。
驚くほど心臓が騒ぐ。
彼女への二度目の告白。
「ずっと、君のそばに僕がいて構わないかな・・・?
僕は、君が好きです。」
そう伝えきった速水は舞に負けない位紅い顔になっていた。けれど、彼は舞に言う。
「・・・僕たちって、付き合う時どっちも『好きだ』って言わなかったよね?」
その言葉に、そういえばと舞は思い返す。
『側にいてもいい』と言った舞。
『好きなにってくれないか』と言った速水。
速水は気持ちを出し惜しむ事はなかったが、恋愛の始めに言わなかったのは確かだった。
ずっと、前。
それは速水にとっては、初めて舞を見た時。
教室で見つけた時、舞のところだけ光って見えた。
直感。『彼女を好きになる。』
そして
ー絶対話しかけるんだー
そう思ったこと。その時からの気持ち。
「受け取って、くれないかな・・・?」
一度目の告白と変わらない弱気な態度に、舞は紅い顔のままうつむき消え入りそうな小さな声で答える
「たっ・・・たわけ。そなたからの贈り物を私が受け取らんわけなかろう・・・っ。」
舞の態度に思わず彼女を抱き締めてこのままさらいたくなる。
そんな衝動を何とか抑え、改めてその手を取り歩き出す。
仕事時間だ。
手を引かれる形の舞に微笑みかけ
「仕事終わったら、うちにおいでよ。ケーキ焼いたから食べて欲しいんだ。
二人でお祝いしよう。」
「・・・うむ。」
真っ赤になって、それでも提案を受け入れる舞を心底可愛いと速水は思う。

帰り道も 手をつないで歩こう
僕の家まで 君の歌うたいながら
大好きな 君の歌を
歌いたい 僕の声で
ー君が馬鹿だと思っても・・・ー


きみのうた おしまい


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