キョウ1様のHPにて2000HIT自爆されたとの事で
フリーで置かれていたSSです。かっさらってきちゃいました。
凄くイイですよう。他愛ない会話なのに、この距離感とか
凄い好みですw
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黄昏と星
いつも笑っている。
だから、見逃してしまう。
でも、もう気がついてしまったから、この先は見逃したりしない。
階段を登ってゆくと、屋上の隅に見慣れた癖のある黒髪を見つけた。
座り込んで、こちらに背中を向けて、動かない。その背中は全てを避けようとしているようで、それでいて全てに溶け込んでいるようで。歳のわりにはまだ華奢な頼りない背中を、いつも彼女は見てきた気がする。
授業で。
仕事で。
戦闘で。
いつも彼は前に居る。
そのせいだろうか、いつの間にか庇われているような気がするのは。
ぽややんと笑いながら、それでも時々他の誰も彼女には向けたことのない不思議な表情を向けてくる男。初めから人とは違う感性を持った男だとは思っていたけれど、向き合う時間が長くなるごとにその確信が強まる。
彼は、何かが違う。
人の持たない何かを既に獲得していて、同時に誰もが持っている何かをまだ持っていないのだ。
それを、利用している。
それに、苦しんでいる。
「速水」
意を決して話しかけた。
多分、彼は自分だけは無視できない・・・・・・そんな奇妙な自信があった。時折向けられる、縋るようなまなざしは恐らく気のせいではないから。
「あ・・・芝村」
すぐに振り返った彼は、丁度その時そんな目をしていた。
立ち上がりもせずこちらを見てくる彼の方に歩いてゆくと、戸惑ったような嬉しそうな複雑な表情をして青い大きな目が見上げてきた。でも、逃げようとはしない。
だから彼女は黙って隣に座った。
触れるか触れないかの微妙な距離。
それは、今の二人の距離でもある。
近づくことが出来ない。片や、恐れゆえに・・・片や、無知ゆえに。
「日が暮れるな」
「うん」
遠くに、落ちかけた太陽。
オレンジ色に彩られた空の反対側は、すでに夜の気配が忍び寄っている。速水の瞳の色と同じその空の端には、いくつかの小さな光が現れ始めていて。
何も変わっていないようで、刻一刻と何かが変わり続けているのだ。
「仕事、しなきゃね」
「そうだな」
周りに人の気配はなく。
小隊メンバーのほとんどがハンガーにいるのだろう。
「しかし、もう少しこうしていてもよかろう・・・空が暗くなるくらいまでは」
「そうだね」
お互い、同じ方を見て。
見えているものも同じであればいいのに。そうすればもう少し、相手のことが分かるだろうに・・・・・・その不安や、みつめる未来も。
二人が、同じ事を考えても、それを彼らが知ることは無い。
しかし同じ事を想うからこそ、並んで前を見ることが出来る。何も言わなくても、お互いの歩調を気にして歩いている。これ以上、離れないように・・・相手が見えなくならないように。
「今は、笑っていないのだな」
「え?」
「いや、それで良いのだ。笑いたいときだけ笑っていれば良い。それが、強さというものだ。笑うことは強さだが、世界に真実を表す事も強さだ」
そう言うと、彼は笑った。
「お前の中にある真実を世界に隠しすぎると、自分すら見失ってしまう。芝村はありのままを受け止める。だから安心するが良い・・・お前の中に何があろうと、我らに敵対せぬ限り受け止めてみせよう」
「うん。ありがとう」
芝村はともかく、彼女にだけは絶対に敵対しない自信がある男は、何かを振り切ったように力強く笑っていた。
この日、彼の中からまた一つ迷いが消えて。
そして弱さが一つ、無くなった。
やがて七つの世界を巡るガンプ・オーマ。
完全なる青と称されるようになる彼の強さは、決して精霊手でも、火の国の宝剣でも、ましてや愛機たる士翼号でもない。
その全ては彼女が与えて、周りが育てた。
力に因らぬ強さ・・・・・・ただの人より生まれしもの。
それを世界はHEROと呼ぶ。
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