相互リンク記念にキョウ1様から頂きました!!
パロ設定なんだけど、かなり独自の世界が出てて
大好きなシリーズです。
おねだりして頂いちゃいましたw


観用少女『わがままな手』




 呼ぶ声が聞こえる。

 俺の名を、君が呼んでいる。

『そうか。おぬし、厚志というのか。綺麗な青の目なのだな』

 そう言って笑った。
 あまり俺に触れようとしなかったけれど、それでもたまに頭を撫でる君の手が、ひどく優しくて。伝わってくる想いが、それだけで俺の中を満たしてくれた。

 なのに。
 ねぇ、どうしていなくなってしまった?
 君を知ってしまった俺に、何故君のいない時間が耐えられるんだろう? どうしてあんな嘘をついたの? ねぇ、どうして、もういないの?




 目を開けた厚志はすぐに起き上がった。
 まだ真夜中。
 二人で床についてからまだ二時間と経っていない。傾いた月の灯りがカーテンの隙間から部屋の中に差し込んでいた。

 青の髪をくしゃくしゃと掻いて、頭を振る。

 そして横を見た。

 気持ち良さそうに眠る、小さな少女。
 再び再会した、大切な人。何も覚えていなくても、彼女だった。

 彼の青の瞳に、渇望とも焦燥ともいえる複雑な光が灯る。
 そっと手を伸ばすと、小さな体を抱え上げて膝の上に載せた。一度眠ってしまうとなかなか起きない寝つきのいい少女は、少し身じろぎをしただけで起きることもなく、またすぐ安らかな眠りについてしまう。

 泣きそうな顔で、厚志は微笑んだ。
 新たな主人の体を包み込むように・・・・・・しがみつくように強く、だけど起こさないように気を遣いながら抱き締める。黒い柔らかな髪の中に顔を埋めて、しばらくそのままでいた。
 温もりを、確かめるように。

 あの時目の前で冷たくなった彼女。
 生きろと言った、残酷なくらい激しい愛情を思い出して。

 君は覚えていないけれど。
 初めて出会ったあの日から、君が俺に触れたあの日から、もうずっと俺には君しかいないんだ。君しか要らない。他なんて見えない。だからもう、俺を独りで残していかないで・・・・・・同じ時間はもう耐えられないよ。

 ずっと、傍にいて。
 俺の名前を呼んで。
 君だけを見つめているから。俺だけを見てよ。

 いつか、もう一度君の名を呼ぶから。今度こそ、君の為に大人になるから。ずっと、守るから。

 ねぇ、舞?

 ほんの少し、厚志が震えた。
 ぎゅっと閉じられた目。まだ大人になりきらない細い肩が揺れて。抱き締めた腕は、離れない。長い指が舞の黒い髪の中に差し入れられて、もどかしく捕まえる。それはまるで絡まる紐のようで。

「ん・・・んぅ? ・・・・・・厚志?」

 いつもなら雷が鳴ったって起きないのに、その時舞がぼんやりと目を見開いた。
 琥珀色の大きな瞳が、目の前にある厚志の顔を映す。

「・・・呼んだか?」

 眠たげな顔でそう言ってくる主人に、厚志は呆気に取られて、でもすぐ笑って頷いた。
 普通、プランツの声は人間には届かない。もちろん、いくつかの条件のクリアや、作られたときからの機能として人にも聞こえる普通の声を最初から持っているプランツもいるが、厚志は違う。
 その自分の、音にならない声を彼女が気づいたのだとしたら・・・例えそれが夢の出来事や、勘違いから出たものだとしても、嬉しい。

「そうか・・・どうした。眠れぬのか?」

 そう言う彼女はまだ眠いのか、目は虚ろで口調は間延びしている。

 何と返していいのかわからず(説明も出来ないし)彼が戸惑っていると、舞が彼の背中に手を伸ばした。抱き締めるように・・・小さな体ではしがみついているようにしか見えないが、それでも腕を回すと厚志の背中を撫でる。

「大丈夫・・・大丈夫だ、厚志。私がいる」

 その囁きに、今度は強く、厚志は少女を抱き締めた。
 探していたのは、彼女。
 無駄でもいい。何度でも俺の名を呼んでくれる、囁いてくれる大切な人。


 あなたを
 知ってしまった
 わがままな この手
 聞き分けのない指
 あなたを 探している
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