同級生


何か言おうとする、男子生徒を置き去りにして少女は背を向け、歩き出す。あまり長くは無いテイルが、それに併せて揺れる。

教室の扉の前で、少女−芝村舞−は、一つ溜息をついた
今、この扉を開けるのはちょっとした勇気が必要だった.
しかし、扉を開けないことには中には入れず
イコール、遅刻扱いになるのだ。
舞は苦い顔をして、扉に手をかけた。

ガラ

と、舞が扉を開くより先に扉が開く
とたんに、視界は真っ暗になりぎゅうぎゅうとした圧迫感に襲われる。
「舞〜、おはよーうww」
勢いと元気いっぱいの声が、至近距離から聞こえる。
舞が暴れるより先に、彼女を解放すると
抱きついていた、ゆるいくせっ毛の少女は嬉しそうに笑う。
「朔巳〜・・・。」
少し怒りのこもった低い声で凄む舞を、気にもせず
朔巳と呼ばれた少女は、舞の顔を覗き込む。
「記録更新したんだって〜?」と、更に煽るように言う。
「おはよう、記録って何?」
教室の隅のほうの席に座っていた、最近編入してきたばかりの
舞のかつてのパートナー速水が、ぽややんとした笑顔でやってきた。
「あ、あのね速水さん・・・。」
「朔巳!!!」
言いかけた、朔巳を舞は大声で遮る。
「いーじゃない、減るものでなしー。」
けろりと言う朔巳。
「??」
不思議そうな顔の速水を見て、舞は苦い顔をした。
「好きにせよ!!」
ぷいと、舞はそっぽを向いて自分の席へ、どすどすと怪獣のような音を立てて歩き出した。
そんな、舞に慣れている二人は、顔を見合わせると、少し笑った。
「遠野さん、ところで記録って何?」
と、改めて速水は朔巳に問うた。
朔巳が、にこりと笑うと、あっさりと答えた
「舞が、男の子を振った数ですよ。」
「振った、数?」
もう一度問い掛ける速水に、朔巳は答える。
「もう、何人か解らなくなりそうな位ですよ。
多ければ週に3人とか・・・。」
明らかに仏頂面で、自分の席に手をつく舞に視線を向ける。
「確かに、もてそうだよね。
・・・・・・綺麗になったよ。」
速水がしみじみ呟くのを、朔巳は、じっと見つめた。
速水の言葉は本心で、自分の傍にいた頃の彼女は
まだ、幼い感じが残っていたしが、今は背も、髪も伸びて前よりも大人びた
「美人」と言う形容に程近い雰囲気が出てきた。
「うん、それに」
朔巳は速水の言葉尻から続けて言った。
「舞は、芝村ですもんね。」
少し淋しげな、朔巳の言葉に、速水は今更ながら気付いた。
舞が、男子に言い寄られるのは、容姿だけでなく
「芝村」という、名前の為でもあった。
全国どこに行こうが芝村の名は絶大で
なおかつ、全国でもトップクラスのパイロットという実績もある。
速水は、朔巳の淋しげな横顔を見て、少し安堵した。
あの頃の、5121に居た頃と同じように、心から彼女を
気にかけてくれる人物が居たことが嬉しくもあり、安心したのだ。





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