サヨナラダンス
初恋



桜のつぼみも開かない頃 君と出会った
花が咲き乱れる頃 君への気持ちに気づいた
そして 青葉が目に染みいる今
光受けて 僕が知らない所まで・・・ー

「げんきでね、げんきでね。」
小さな腕を一杯に伸ばしてののみは舞を抱き締める。
静かに、密やかに去るつもりだった舞だったが、「ぜったいおみおくりするの」と言って聞かないののみに負けて最寄りの駅まで同行を許した。
ののみの横には何故か速水の姿がある。どうやら、ののみから話を聞き、同行を熱望したようだ。
舞としては、昨夜の『宣言』が頭にある為出来ることなら速水とは顔を合わせたくなかったのが本音である。
(だから、さっさと去ってしまいたかったというのに。)
そう思って、ちらりと速水を見ると、目があってしまい目を逸らす。
顔が熱い。
可愛いな。と速水は思う。明日から会えなくなるから、と声や仕草を出来る限りの全て記憶し胸の奥に閉じ込めようとする。
「元気でね。」
出来る限りの笑顔で右手を差し出す。速水の仕草に舞は眉根を寄せ問う。
「何の真似だ?」
「握手しよう。元気で、って。」
切ない光を放つ速水の瞳が胸を苦しくさせる。
そうか、明日からはもう私の側にこの男は居ないのだな。
舞は右手を延ばし、手を握る。
「武運を。」
芝村らしからぬ、無事を願う激励の言葉を伝える。そうして、ゆっくり手を離す。
離れた手を速水は、ぎゅっと握る。昨夜のように温もりを奪われる前に。
離れた二人の手をののみが、ぎゅうっと握る。
「ばいばいじゃないの。かなしいは、めーだからまたあうのよ、ぜったいに。だからね、またね、なのよ。」
ののみの言葉に速水は笑って一つ頷く。
「うん、そうだね。またね、だね。」
そう言うと舞を見て
「またね、芝村。昨日の『約束』忘れないでね。」
と言う速水に、舞はうっとなるが駅のアナウンスが入り、怒る時間も与えてくれなかった。
「やくそく?」
「うん。でも、内緒。」
笑う速水につられるように、ののみも笑って
「しあわせのやくそくはいいことなの。きっと、まもられるやくそくなの。」
ね?と、舞をみてののみはまた笑う。
「芝村は約束を違えん。」
照れたぶっきらぼうな物言いを最後に舞はホームへ歩き出す。
「またね。またね。」とののみは小さな手がちぎれる位大きく手を振る。速水も負けない位大きく手を振った。電車が入り、舞を連れ去って行く。扉の向こうの舞は何時もの毅然とした顔をしていた。

君にあえてよかった。
痛い位手を振る。
絶対、また君に会うんだと生きていく理由をくれた。
あの時言えなかった言葉、伝えられるように。
そして、君がくれた言葉の意味を聞くまで。
"またね、僕の初恋。"
ただ、いつまでも見えなくなる君に手を振る。



BGM:AyanoTsuji「願い」「虹」「さようなら」「君にありがとう」


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