MASK

「なあなあ、速水君って、いっつもわろてると思わへん?」
昼休み、味のれんから戻ってきた舞は、談笑している祭たちの会話に
ふと、足を止めて耳を傾けた。
「確かに!!速水君って大概笑ってるよねー。
んまあ、それがいいっちゃいいんだけどね〜。」
ま、ちょっと背が低いのが難だけどー。と、新井木は、からから笑う。

いつも 
わらって
いる

自分の席に腰を降ろし、舞は専門書を手にしながら
先刻の言葉を心の中で反芻した。

確かに、舞も同機パートナーの速水について知っている事は少なかった。
何時も優しげな笑顔で誰にでも接している。
芝村である舞をも恐れる事無く、だ。

それは、笑顔と言うオブラートで内面を隠している
もしくは、笑顔という名のポーカーフェイスの持ち主なのだろう。
舞は、本を片手にそこまで結論付けたところで

「あれ、芝村戻ってたんだ?」

噂の本人が、教室に戻ってきた。
「うん?何?」
舞の視線を受けて、速水は笑顔で小首を傾げる。
―また笑顔か―
舞は、面白くなさそうに「何でもない」と言うとふいとそっぽを向いた。



普段通りの仕事終了後も舞は作業を続け、気が付くと時間は日付が変る直前になっていた。
一つ息を吐いて、舞は片付けを済ませハンガーを後にした。
プレハブ校舎前まで戻った時
「あれ、芝村。まだ残ってたの?」
と、今にも壊れ落ちそうな校舎の階段から速水が声をかけて来た。
「お互い様だ。そなた何をしておった。」
仕事時間終了後、ふらりと姿を消したので舞はてっきり帰ったものだと思っていた。
「うん?訓練だよ。体力あんまり自信無いから、少しでも強化しておきたくて…。
ごめんね?調整とか全部芝村がしてくれたんだよね?」
そう言ってまた笑う。

不愉快だ

不意に舞はそう思った。
少しでも勝率を上げるために不得手を補うのは良い事だ。
その事について舞は速水に謝られる理由は無い。
不愉快なのは
『笑顔』
だ。
「そなたはいつも笑顔なのだな。」
冷めた舞の声に、速水の笑顔が一瞬崩れる。
「え?」
何か、まずったのか。速水は心の中で彼女の気分を害したで有ろう事柄を検索する。
だが、そんなものは舞に該当するわけが無い。
「それがそなたの生き方だと言うのなら、私は何もいわぬ。」
だが、引っかかる違和感。拭えない疑念。
「私はそなたに背中を預けると云ったが…今のままでは
撤回せざるをえん。」
「な…どういう事!?」
「信用できぬ、と言う事だ。」
そう言って歩き出した舞の腕を速水が掴む。
掴まれて振り向いた舞は、速水を真っ直ぐ見詰める。
そこには、笑顔を取り去った、真剣な表情の速水が居た。
「そういう顔も出来るではないか。」
ふ、と表情を緩めて舞は速水に告げた。
「私の前でまで繕った笑顔をするな。不愉快だ。」
速水は少し瞳を見開いて、小さく笑った。
「君は僕の気付きたくない事に気付かせてくれるね。」
「何がだ?」
問いに答えるように、いきなり舞を抱きしめる。
「なっ、やめっ!!」
暴れだした舞を、あっさりと速水は開放する。
「君に嫌われたくないから、これで我慢するよ。」
きっ、と睨む舞に速水は作り物ではない笑顔を見せた。
まさか、この仮面がバレるとはね。

だけど、逃がさないから。

君の視線が、仮面を剥がした
封印を解いた責任は取ってもらうから。

一人心の中でそう呟くと、舞に笑いかけた
「夜道は危ないから、送っていくよ。」
「たたた・・・たわけ!!いらぬ!!危ないのはそなただろう!!」
近所迷惑なくらい大きな舞の声が響いた。


―仮面捨てて 優しくて残酷な 素顔を見せたいの
 アナタダケニアゲル secret―



5121打踏んで下さった、ゆっきーさまのリクでSSを書かせて頂きました。
「黒速水×舞」
ううむ。いっつも白ばっかなので難産気味です。リクエストに添えているでしょうか??
しかも、まだ付き合ってない設定です。親友状態?「MASK」ってのは
歌のタイトルです。…某アニメのED…。すみません。
こんなですが、ゆっきーさま有り難うございました!!

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